FC2ブログ

ずっと、ずーっと

連続小説・こいこいさんの恋 #14  



















勇人からの電話に綾乃は慄然とした。

「今は疲れすぎてる、明日詳しい話をする」

そう言ったきり、綾乃が次の言葉を発する前に勇人の電話は切れた。

ー何がどうしたんよ。何で、話してくれなかったんよ。

綾乃は心のなかで勇人に何度も問いかけた。

ともかく、勇人の身に大変なことがあったことは分かった。

だが、それ以上知る手段がない。

勇人の会社に知っている人はいない。

付き合って一年にも満たないが、一度も勇人の友人も、会社の人も紹介されたことはなかった。

だが、岡山県の親のところには、挨拶には行ったことがある。

一度だけだった。

勇人の両親は温かくもてなしてくれたが、それだけだった。

勇人の両親は、勇人の女友達を連れてくることに慣れているようだった。

だから、綾乃のことについて突っ込まれて聞かれることはなかった。

あっさりしたものだった。

美味しいお菓子とお茶を出してくれたが、挨拶もそこそこに奥へ引っ込んでしまった。

そんな勇人の親に、勇人に何があったのか聞けるはずもないと思った。

第一、親も知らない可能性もある。

不安だった。

愛する男の身になにかあったとしても、自分は何も出来ない。つくづく、自分の愛情の頼りなさに落ち込むしかなかった。




「こいこいさん、どないしました」

みゆきが声をかけてきた。

出かけようと、靴を履いていた最中に勇人からの電話があり、その場に立ち尽くしていたので、
みゆきが変に思って声をかけてきたのだ。

「あー、何でもないわ。ちょっと忘れ物したんで、部屋に戻ろうかと考えていたんや」

綾乃は、部屋に駆け上がった。

大学に行く予定だったが、止めようかと思っていた。

頭がぼーとして、事故に巻き込まれかねないと不安に感じたからだった。

綾乃は、来ていたリクルートスーツを脱いで、カジュアルな洋服に着替えた。

勇人は明日まで電話が出来ない事情があるようなので、自分が何をしていようが、
関係は無いだろう。だが、何もする気になれない、人とも話したくない気分だった。



勇人は、病院に運ばれた。

救急外来に運び込まれ、警察官立会いのもとに、診察が行われていた。

勇人の外見には目立った外傷はなく、疲れた様子は見受けられるものの、
何か重大な障害があるようには見えなかったが、念のために、CTでの精密な検査をすることになったのだ。


所轄の刑事が勇人に張り付いていた。

「まだ落ち着かれないでしょうが、話せますか」

「大丈夫やけど、昨日のことがよく思い出せへんです」

「ショックだったんやろうことは分かります。無理に思い出せへんでもいいですから、
思い出せることだけでもお話できませんか」

横にいた医師が口を挟んだ。

「検査が終わってからにしてもらえませんか。その後、点滴を打ちますから、
そうすれば大分落ち着かれると思いますんで」

刑事は、検査が終わるまで尋問はやめておくことに同意した。

検査している最中に勇人の会社の人間が病院に駆けつけて来た。




#15に続く。







にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村





ポチッとお願いします。



















熊本県・天草  






















九州の東側の海は、潮が引くとご覧のような光景になるところが多いようです。
このような光景を見るのが初めてだったので、驚きました。









IMG_0121.jpg





IMG_0125.jpg





IMG_0118.jpg









沖縄や外国のようなエメラルドグリーン一色の海も良いのですが、
このように変化のある海岸線もいいもんだとしばらくその場所を
動くことが出来ませんでした。









IMG_0113.jpg










熊本市でレンタカーを借りて天草の本渡市までその日のうちに着く
という強行軍だったのですが、見たこともない景色を満喫して楽しい
ドライブになりました。途中、道の駅で柑橘類が売られていたので、
一袋買って、それを食べながらのんびりと天草地方の島々を結ぶ
橋を数回わたり、その日の午後4時過ぎに本渡市の中心部にある
ホテルに着きました。
3月なかごろだったと思いますが、南の地方なので暖かいと思って
薄着にしたのが大失敗で、すごく寒かったのを覚えています。





にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村




ポチッとお願いします。




















連続小説・こいこいさんの恋 #13  


















朝食を慌しく食べ終えて、綾乃はリクルートスーツを着込んで、ようようとして家を出た。

勇人の身の上に何が起きたかということをまったく知らないままだった。




勇人の会社では、大歓声が上がっていた。

勇人が、兵庫県の山の中で無事に発見されたからである。

「身代金を諦めたのか」

淀屋橋中央署強行犯係りの久保田は犯人の意図がまだすっきりと分からなかった。

「いざ、身代金を要求するところになって怖くなったんですやろか」

「どうも分からんな、そこらへんが。とにかくガイシャに話を聞くまでは細かいところがよう分からへんわ」

「しゃべれるくらい元気やったらいいんですけど」

「そやな」

部下の刑事とそんな会話をしながら、連絡を受けた兵庫県の所轄に向かう部下に指示を出した。


勇人のパートナーの前田祐希はとりあえず、勇人の命に別状がないことを安堵していたが、
犯人が捕まっていないことに恐怖心を憶えた。

前田のスマホが鳴った。

警察からだった。

「鈴木さんは、すぐに最寄の病院に運ばれたそうです。
そこでお話出来るようでしたら話しを聞かせてもらいますが、前田さんも行かれますか」

「もちろん、行きます。ただ、犯人はまだ捕まっていないのですね」

「そうなんですわ。鈴木さんが発見された場所が、国道いうても山のてっぺんですねん。
たまたま通りかかったトラックに発見されて110番されたらしいやけど、
パトカーと救急車が到着するまでに30分以上かかってまんねん。
それから鈴木さんらしいということが判明してから緊急に検問配備したんですけど、
まだ犯人逮捕には至っていないというわけですわ」

「いずれ捕まりますか」

「監視カメラなんかの解析をしなあかんからしばらく時間はかかりますやろうな。
鈴木さんから犯人に繋がる情報があればもっと早く犯人を捕まえることができますやろ」

「よろしくお願いします」



綾乃は、佐岡商会には就職はしないと決めていた。

親や兄弟がいる会社なら、ある意味楽かも知れない。

だが、それよりもっと違う世界を体験してみたかった。

鈴木勇人と知り合ったのも、インターシップで訪れたイベントで勇人にソフト業界の紹介を受けたことがきっかけだった。

勇人の会社は、エンジニアしか求人していなかったが、彼に教えてもらった総合的なIT会社を志望していたのだ。

その日は、二回目の面接に向かうところだった。

集団面接だった。

それを克服すれば、役員面接、社長面接を経て、内定がもらえる。

早く内定が欲しい気持ちも強かったが、それよりも自分が納得する会社に就職したいと思っていた。

面接を終わり、自宅に戻った綾乃のスマホが鳴ったのは午後の9時すぎだった。



「あやの・・・・」



「勇人さん、どうしたの」




「あやの・・・・」




明らかに弱弱しい声だった。


「何かあったん?」


「酷い目にあった・・・・」


「どうしたねん」


「今は疲れとるから、明日また電話するわ」


「そんなこと言わんといてよ。心配するやない」


「ごめんな、とにかく明日な」



電話は切れた。




綾乃はその夜、ほとんど眠れなかった。








#14に続く。









にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村




ポチッとお願いします。
















ほっつき写真 原宿 竹下通り  






原宿竹下通り 蔵出し写真大放出















今年2月の竹下通りの風景を公開します。
オヤジのくせにピンク系の色に反応して写真を
撮りまくった結果です。お目汚しにどうぞ。




DSC02179.jpg




DSC02172.jpg





DSC02191.jpg





DSC02200.jpg





DSC02208.jpg









竹下通りはほぼ十年ぶりでした。子供たちのお供できました。
娘にせがまれて洋服を買いましたが、どこの店だったかまったく
覚えていません。







DSC02229.jpg











女の子の靴下が可愛くて好きですね。靴下だけを集めた写真集を
出してみたいと思いますが需要はなさそうですね。

でもそんな写真を撮ってみたいという思いが強いのですが
靴下をはいてくれるモデルで悩みそうなので難しいかな。









DSC02190.jpg








浴衣で歩く人。多分外人だろうな。こんなところで浴衣なんて・・・・
意外に日本人だったりして。









DSC022161.jpg










大きな綿菓子に喜ぶ外人さん。外国には綿あめはあるのだろうか。






にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村





ポチッとお願いします。































連続小説・こいこいさんの恋 #12  

















敏美の夫、緒方英男は、妻の実家の設計を頼んだ設計会社が突然仕事を降り、
実家に迷惑をかけたことを悔やんでいた。

本社と支社の派閥争いに実家を巻き込んでしまい、申し訳ないという気持ちと、
社内にただならぬ雰囲気が立ち込めていることを、この件で実感していた。

「お父はんも、気にせんでええって言わはるし、あんたがそこまで落ち込むことはないやろ」

敏美は、英男が夕食時にほとんど口を聞かないうえに、半分も食べていないことを気にして、
そう言ったのだが、その言葉がまた英男に圧し掛かってきた。

「違うねん。仕事を降りた設計事務所は、本社筋でな、どうやら本社の方から圧力がかかって、
支社の仕事に手を貸すなということだったらしいんや」

「えげつないなぁ。そんなことまでするのかいな」

「社長派は本社、専務派は大阪支社ときっちり別れてんねん」

「そやかて、強いのは本社やろ」

「そこが複雑やねん。本社の社長はお前も知っているとおり、婿養子や。
専務は会長の四男やからな。会長としてもどちらの味方もできんさかい、よけい複雑化しているってこっちゃ」

「専務派はどうしたいねん」

「何とか、婿養子を社長の椅子から引きづり降ろして、自分が社長になろうというわけや」

「役員会で多数派を作ればいいんやないの」

「今いる役員はほとんどが会長の子飼いやから、社長派も専務派も少ないねん。
会長がどちらの味方も出来ないから、役員会は当然中立というわけや」

「実績を上げやすいのは本社ですやろ、やっぱり」

「ところが専務の奥さんは、民自党の実力者の国会議員が父親やから、
まだ本気では応援しとらんけど、本気を出せば大きな取引を持ってこれるわけや」

「どっちが勝つかわからんね」

「そうや」

もし、専務が社内闘争に勝ったらどうなるのだろうと想像し始めた。

専務の子飼いの英男は、当然社長になった専務について東京本社に栄転するだろう。

そうなれば引越しだ。

役員になれるかも知れない。

単身赴任というわけにもいかないだろう。

そうなると、佐岡商会のほうはどうなるか。

自分がいなくても、しっかりした番頭のような専務もいるが、父親は何といっても優柔不断なぼんぼんだから、
不安といえば不安だった。

だが、やはりここは夫についていく以外に方法はないような気もしていた。

「勝つ見込みはあるんやろうか」

「半々やな。婿養子も東大出の秀才や。簡単には負けへんやろうし」



そのころ、鈴木勇人の会社では警察と社員たちが眠ることもなく、犯人からの連絡を待っていた。

日が昇り、朝食を社員たちが手分けして買出しして戻ってきたときだった。

淀橋中央署の久保田警部の無線に、本部からの連絡が入った。

「社長はんが見つかりました」

社内に大きなどよめきが起こった。

「兵庫県の山の中で、今朝の5時くらいに道を歩いているところを保護されたようです。
身には何も持っていなかったので、紹介が遅れましたが、人相風体が社長はんに似ていますから、
どなたか警察車両に乗って、確認に行ってもらえまへんでっしゃろうか」

「それなら自分が行きますわ」

前田が名乗り出た。




#13に続く。





にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村




ポチッとお願いします。














香川県・丸亀市 最終回  


















丸亀市の港からフェリーに乗って20分で本島に着き、貸自転車を借りて島内を一周しました。
過疎が続く離島ですから本島に人がいません。聞けば、島にある小学校と中学校には約20人
の子供がいるそうです。それから7年経っていますので今はもっと少なくなっているかも知れません。
瀬戸内の離島はそれぞれに味があり、温暖な気候で住みやすい感じですが、やはり仕事が無いの
でしょうね。若い人はどんどん島を離れていくそうです。








IMG_1692.jpg









島のあちこちに花が咲いていました。花の写真はあまり撮らないのですが、この島ではけっこう
レンズを向けましたね。









IMG_1700.jpg








フェリー乗り場に向かう途中にあったお地蔵さん。










IMG_1718.jpg





IMG_1721.jpg





IMG_1724.jpg










丸亀の町に戻りました。レトロな街並みが残っていました。本当はもう一日高松に滞在する予定でしたが、
宿泊したホテルがあまりにも酷かったので、飛行機をキャンセルして岡山から新幹線で帰りました。
全国にチェーン展開しているホテルでしたが、常用している「東横イン」ではなく、違うのにしたところ大間違い
でした。部屋は狭く、窓が固定されていて開けられない。無料朝食があまりにも不味い。まるでホームレスの炊き出し
のような感じで、二日目にはホテルの前にあるマクドナルドで朝食を買いました。それ以来2度とそのホテルチェーンに
は泊まっていません。






にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村






ポチッとお願いします。























連続小説・こいこいさんの恋 #11  



















勇人は近づく足音に耳を尖らせた。

ドアが開いた。

男は、手に飲み物を持っていた。

勇人にかませてある猿ぐつわを外して、ストローを口に入れた。

勇人は唾液を猿ぐつわのタオルに吸い取られ、口の中は砂漠のようになっていたので、
物凄い勢いで水を吸い上げた。あまりの激しさにむせいだほどだった。

「ゆっくり飲めよ。また持ってくるから」

男は優しげな言葉を勇人にかけた。

勇人が飲み終わると、男は黙って部屋を出ていった。

勇人は口を聞くことが出来なかった。何か言うと、殺されるような恐怖心が起こってきたからだった。

勇人の会社では、会議室をふたつ潰して捜査員が詰めていた。

所轄の淀橋中央署の強行班の他に、捜査二課、大阪府警組織犯罪対策課からの応援要員もいた。

犯人からの電話はその日の午前中以来かかってこなかった。もう、8時間は経過している。



綾乃はまだそのことを知らなかった。

午前中に大学へ行って、ゼミに出て、そのまま家に帰ってきて、
お手伝いのみゆきと一緒に夕ご飯の支度をしていた。

それまでは、料理のりの字も興味がなかったのだが、勇人と付き合うことになって、急に料理に興味が湧いてきたようだ。

「こいこいさん、ええ人ができたんとちがいます」

みゆきがそう言うので、敏美は確かに急に料理に興味を持ったということの意味が分かったような気がした。

「そうなんかな。そうなええねぇ」

まだ綾乃から何も聞いてなかった敏美は、みゆきに曖昧な受け答えしか出来なかった。


勇人の会社では、社員が誰も帰らず、緊張した雰囲気になっていた。

共同経営者の前田は、刑事たちと会議室に詰めていた。

外部からの電話はすべて会議室で受けることになっていた。

「鈴木社長は、誰かに恨まれたりはしてはったということはありまへんか」

淀橋中央署の強行班係長の久保田が前田や、会議室にいた、幹部社員に向かって聞いた。

誰も、すぐには思いつかなかった。

ITの会社は、競争が激しく、顧客の取り合いも始終ある。

だが、勇人は営業のことはほとんど前田に任せて、主に技術部門を管理していたので、
外部の人間から恨まれることはなかった。

刑事にそんなことを聞かれて、前田は変に思った。

鈴木勇人を誘拐した犯人は、金目当てではないのか、恨みによる犯行なら勇人はこのまま殺されるのかも知れない。

勇人が誰かに恨まれるような人間ではないことは、学生時代からの付き合いで分かる。

だが、人間には裏の顔もある。前田も知らないプライベートで、何かトラブルを抱えていたこともありえる。

今はとにかく勇人の無事を祈るほかはない。

しかし、前田たちをはじめ、社員全員が心配するなか、犯人からの連絡は、次の日の朝が来るまでなかった。


#12に続く。





にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村




ポチッとお願いします。






























ほっつき写真 原宿  





















表参道から神宮前交差点を曲がると歩く人の種類が変わる。
ぐっと若くなり、女の子向けの店が出現しだす。
オヤジがカメラを構えて写真に撮るのはいささか勇気のいる行為だが
もともと厚顔無恥な私は構わずシャッターを押す。
たまにはこういう町をほっつくのもいいものだ。
老化した細胞が少しは生き返ったような自己満足を覚える。







DSC02145.jpg









座り込む外国の少女。
どこへ行こうか迷っているのか、疲れて休んでいるのか。








DSC02136.jpg









こういう店は原宿によく似合う。
私はオヤジのくせにこういう色合いが好きなんだ。







DSC02137.jpg






DSC02139.jpg





DSC02163.jpg









トレンドに敏感な10代の女子に圧倒的な人気のある原宿。
全国から来るんだろうな。








にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村





ポチッとお願いします。

























連続小説・こいこいさんの恋 #10  




















警察が鈴木勇人の会社に到着したのは、通報してから30分くらいたったころだった。

「所轄の久保田と申します。その後犯人から連絡はありましたか」

40歳代らしい紺色のスーツを着た刑事がバッジを見せながら前田祐希に聞いてきた。

「まだありません。くれぐれもお願いしますが、犯人は警察に知らせたら殺すいってますねん。その点、気をつけてください」

「分かっております。ここへ来るときも覆面パトカーで来ていますから。
それから、運送やのトラックで、電話解析班も来ますから、窓を全部閉め切った部屋を用意してください」

久保田は所轄の淀屋橋北署の刑事課強行班の係長だった。

まだ、誘拐が本物か狂言かもしくは、単なる失踪か分からない段階だが、一応の体制は整えておかなければならない。

犯人が次の電話で身代金の受け渡しなどの具体的な指示が来るまでに、
本署にも応援を頼んでおかなければならない。


そのころ、鈴木勇人は目隠しをされ、猿ぐつわをかまされていた。

もちろん手足が厳重に固定されていて身動きが取れない。

昨夜、午前零時すぎに飲み過ぎて、大通りでタクシー待ちをしていたとき、
突然後頭部に衝撃を受け、そのまま崩れ去り倒れたのだ。

勇人は駆けつけた男たちにバンに運び込まれ、監禁現場に連れて来られた。

ただ、勇人は昨夜のことはほとんど覚えていなかった。

殴られたときの衝撃で、記憶が飛んだのかも知れなかった。

勇人は耳を凝らした。

音で、何とか自分のいる場所を探ろうとしていた。

物音はしない。

勇人ひとりだけで、椅子に縛りつけられているようだった。

監視している人間はいそうにもない。

目隠しをされていても同じ部屋に誰かがいれば、息遣いで分かるはずだ。

気配を感じるようなものはなかった。

だが、それにしても静か過ぎる。

地下室に監禁されているのか。

かすかに外で鳥の鳴き声が聞こえてくることがある。

どうやら、地下室ではなさそうだ。

それに、都会でもなさそうだった。

自動車の音もまったく聞こえなかった。

人の気配がしないのだ。

それならどこだろう。

人里離れた一軒家かと想像した。

寒さも暑さも感じない。

季節は10月だから、朝晩は冷え込むこともあるだろうが、今は20度くらいだろうか。そんな感じがした。

俺は誘拐されたのだとうか、殺されるのだろうか。

勇人は気がついて初めて背筋に冷や汗をかくほどの恐怖心を覚えた。

なぜ、自分が誘拐されなければならないかったのだろうか。

金が目的なのか。

いずれにしても、自分の運命は自分にこんなことをした人物にすべてが握られている。

手足を動かそうとしたが、まったく動かすことが出来ない。

猿ぐつわのせいで、口のなかがからからだった。喉が渇いて、ひりひりしている。それが一番の苦痛だった。

「水が飲みたい」

心からそう思った。

清としたなかに、突然かすかな物音がした。

階段を登ってくる音のようだった。

その足音は、近づいてきた。

ドアを開ける音がした。


#11に続く。










にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村



ポチッとお願いします。





















Paris #26  



















パリのお菓子はおいしい。最近では日本人シェフ(パテシェ)が多くなっている
というけど、もっと庶民的な店で買う何気ないお菓子がとてもおいしい。








EPSN1148.jpg









雑多なポスターが溢れているのもパリの現実。








EPSN1139m1.jpg





EPSN1137m1.jpg





EPSN1124.jpg







石の建物に囲まれていると、木の文化のある日本の古い町並み
が本当に懐かしくなる。
私がもしパリに留学したら1か月で逃げ帰るかも知れない。








EPSN1123.jpg









パリの街角には必ず大きな住居表示があってその路が住所になっているので分かりやすい。





にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村






ポチッとお願いします。































▲Page top