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ずっと、ずーっと

連続小説・こいこいさんの恋 #27  



















夏希と浅見が初めてのデートを楽しんでいると、不審な男が近づき、紙に書かれたメモを渡してきた。

その男が姿を消すと、ふたりの男が現れた。

刑事だった。

不審な男は、夏希を綾乃と間違えてメモを渡したというのだった。

刑事たちはしばらくレストランに留まってくれと言い残し去っていった。

「どういういうことやろ」

浅見は今起きたことが信じられない表情だった。

「ごめんなさい。妹と私と間違えたみたい」

夏希は妹の交際相手が誘拐されたこと、そのときもし相手の言う通り実行しなければ、
妹に危害を加えると脅迫されたことを話した。

「それは大変でしたな」

「ごめんなさい、巻き込んでしまって」

夏希は、浅見がこのことで心が離れてしまうことが心配だった。

浅見は、夏希の話しを聞いて安堵した表情をしたが、現状どうしたらいいのか分からなかった。

しばらくすると、別の刑事たちが現れた。

「せっかくのお時間でしたけれど、警察の車でお送りしますんでご自宅にお帰りいただけますか」

淀屋橋北署の安岡という刑事はふたりを促がした。

「浅見さん、ごめんなさい。また改めてお会いできませんか」

「ありがとうございます。ご連絡お待ちしてますわ」

家まで帰る途中で、夏希はあの不審な男はどうしたのかと聞いたが、捜査中ということで詳しくは話さなかった。



夏希が家に帰ると、由紀夫をはじめ、由美まで来て、家族全員で夏希の帰りを待っていた。

そこには淀屋橋北署の久保田もいた。

「こいちゃん、ごめんなさい」

綾乃が泣きながら抱きついてきた。

「いいんよ、あんたが無事にいてくれたらうちはそれだけでいいんやから」

綾乃の髪を撫でながら夏希も溢れてくるものを感じていた。


家族全員が揃ったところで久保田が話し始めた。

「実は、夏希さんにメモを渡したのは犯人グループのひとりと思われます。
夏希さんを綾乃さんと間違えたんやないかと思うんですけど、
実はこの家を監視している男たちがいることをうちでは掴んでおったんで、
逆にそいつらをマークしていたんですわ。そしたら犯人たちは夏希さんが外出しはったとき、
夏希さんを綾乃さんと間違えて尾行を始めた。
それをまた我々が尾行するというややこしいことになりましたんや。
そしたら、夏希さんにいきなり接触してきた。われわれは、そこで犯人を捕まえることも出来たのですが、
そのまま泳がせて、尾行し、犯人を動かしている黒幕まで突き止めようとしていることにしたのです。
ですから現在でもその男を別の刑事たちが追跡実行中というわけなんですわ」

「ここを見張っている奴はまだおるんですか」由紀夫が久保田に聞いた。

「まだいますよ。かなり大掛かりなグループやないですか。
そやから私も出来るだけ刑事に見えんようにしてここに来ましたんや」

「怖いわ」

由美が小声でつぶやいた。

「じきに犯人を検挙しますよって、それまではご辛抱してください」

「じきにっていつになりますのや」

敏美がやや怒ったように久保田に言った。

「いつかは断言できまへんけど、犯人たちの面はほぼ分かってますから、
実行犯たちと黒幕を結ぶ線が確認された段階で一斉検挙ということになると思いますわ。
ですんで、このことはくれぐれも他聞されんようにお願いしますわ」


由紀夫は深くため息をついた。


綾乃は、家族に迷惑をかけた罪悪感で押しつぶされそうな心境だった。




#28に続く。






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フェリーで北海道  石狩市  
















小樽から札幌に向かいました。
チェックインまで時間が余ったので、石狩市にある「ハマナスの丘公園」に向かいました。








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「ハマナスの丘公園」は、日本海と石狩川が交わる砂洲に広がるところにあります。








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石狩燈台です。
ここも北海道の典型的な景色ですね。
本州ではありえない空気感です。







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広野に続く道。







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日本海側の景色。
日本海だけは日本のどこから見ても荒々しいものを感じるのが面白いところ。








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連続小説・こいこいさんの恋 #26  




















夏希がホテルのロビーにつくと、まだ浅見は来ていなかった。

隅のほうのソファに座っているのではないかと広いロビーを隅々まで探したが、まだ来ていないようだった。

空いているソファがあったのでそこに座り、ハンドバッグのなかから化粧直しをしようと手鏡を出そうとしたとき、
目の前に浅見が立っていた。

「お待たせしました」

相変わらず地味な色のスーツを着て、几帳面が服を着たような風体だった。

「お待たせしました」

「いえ、私もいま来たばかりです」

浅見は満面な笑みを浮かべてきた。

その笑顔からは明らかに夏希に好意を持っているのが伺えた。

それが夏希を幸福感に包んだ。

「食事にしますけど、夏希さんは海のものは大丈夫やったですか」

「はい、何でもいただきます」

「それは良かった。では」

夏希は浅見がデートの主導権をとってくれたことも嬉しかった。

いくら真面目でもそれだけでは男としての魅力には乏しい、
ぐいぐい引っ張ってくれる力強さがないと男としては魅力がないとも考えていた。

浅見は、予約していた海鮮鉄板焼きの店に夏希を案内した。

カウンター席とボックス席があったが、ゆっくり話したいので、ボックス席に座った。

「えびと鮑を頼みますけどよろしいですか」

「お願いします」

浅見は酒が好きらしく、まず白ワインを頼み、飲み干すと日本酒を頼んだ。

「お強いんですね」

「まあ、これくらいしか楽しみがなかったものですから」

少し頬を赤くしているが、気持ち良くなっようで口が滑らかになって、自分の生い立ちや、少年時代のことをしゃべった。

そして、鉄板で焼かれた料理が運ばれたときであった。

ひとりの男がふたりに近づいてきた。

スーツ姿で40歳台くらいのサラリーマン風の男は、夏希の顔を見ながらにやりとして、
夏希の前に紙切れを置いて去っていった。

「何ですかあの男は。知り合いやったんですか」

「いえいえ、全然知らない人です。何だか気持ち悪いわ」

浅見はせっかく夏希と楽しい時間を壊されたと思い、酷い表情になった・

「失礼なやっちゃ」

夏希は目の前に置かれた紙切れを広げた。

そこには、「あんたの婚約者に感謝しろ。元気でいられることは大事なことだ」と書かれていた。

夏希は思わず声を上げた。

浅見は驚いて、夏希の見ていた紙切れを取り、書かれている内容にさらに驚愕した。

「これはどういう意味やねん」

「私にも分かりません」

「あなたには婚約者がいるのですか」

「そんなことはないです。まったく訳が分かりません」

「人間違いしてはるんやろか」

そのとき、ふたりの男は近づいてきた。

ふたりはほぼ同時に警察官バッジを見せた。

「大阪府警察のものです。訳は後で詳しくお話しますが、あなたの妹さんの件に関わることだと思いますが、
お二人はしばらくここに居ていただけますか」

夏希は何が起こっているのか分からなかったのだが、妹の件と聞いてピンときた。

「実は私の妹の付き合っている人が事件に巻き込まれて、そのことだと思います。こんなことになってしまってすいません」

「いえいえ、大丈夫です」


浅見は思わぬ出来事が立て続けに起こって、あっけに取られていたが、
とりあえず夏希本人のことではないと聞いて、少し安堵した。


#27に続く。











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ほっつき写真 千代田区神保町  



















ここの餃子をどのくらい食べただろうか。おそらく数百回は食べていると思う。
いわゆる「平たい餃子」の発祥の店だと思う。
ただ、私が好きなのは餃子だけではなく、ここの味噌汁なのだ。
名古屋出身の私にはなじみ深い「赤味噌」。生粋の名古屋である父親は赤味噌しか
口にしなかった。そのせいで北海道出身の母親と喧嘩が絶えなかったものだった。







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さんざんテレビで放送されているので知っている人も多い「キッチン南海」
名物は「かつカレー」である。
若い私には分厚いかつがのったカレーは何よりのスタミナ源だった。







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神保町では有名な画廊。
知り合いが何人もここで個展を開いた。




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表通りの古本屋は有名だが、いっぽん筋に入った「すずらん通り」にある古本屋は
まだまだ健在だった。
全国どこの街にもあった古本屋がほとんど無くなっていくなか、神保町の古本屋が
なんとか生き残っているのはうれしい。










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連続小説・こいこいさんの恋 #25  



















夏希が夕食を終え、自室に戻って買ってきた雑誌を読んでいたとき、
突然スマホが振動した。大学の友人からだろうと、ぼんやり表示を見ると、見覚えの無い番号からだった。

「はい、佐岡ですけど」

「先日お会いした浅見です」

まさかと夏見は身震いした。

紹介されて楽しい食事をし、浅見に電話番号やラインのアドレスは教えたが、まさかかかってくるとは思ってみなかった。

夏希は、浅見のまじめそうで大人しそうな人柄に好印象を持っていたが、いつものことながら、
相手に気に入られないのではないかという気持ちをいつも抱いていたからだった。

「うそ・・・・・」

声には出さなかったが、心が震えていた。

「すいません、お忙しかったですか」

「いえ、そんなことはないです」

「あのー、またお会いできないかと思いまして」

「それは・・・いいですけど」

「ほんまですか。いやー電話するだけで手に汗をかいてます」

「私は電話をいただけるとは思ってなかったです」

「ぜひお会いしたいんです」

「私のほうこそお会いしたいです」

「うれしいです。では来週どうでしょう」

「火曜日以外でしたら、時間はありますけど」

「では水曜日ではいかがですか」

「何時にしましょう」

「大学が終わってからになりますけど、よろしいですか」

「はい、大丈夫です」

「それやったら、7時に梅田のヒルトンホテルのロビーではどうでしょうか」

「分かりました、伺います」

「ありがとうございました。都合が悪くなったら遠慮せずに電話ください」

ああ、とうとうこんな日が来てしまった。

うれしい反面、不安でもある。

やっとデートする相手が見つかった。

結婚を前提にしていることは何気に相手には知らされているだろう。

お互いにそのつもりで紹介者を通じて会ったわけだから、
何回でも会うということは結婚に向けて進んでいるということだ。だが、二回会って、
やはり合わないということで、ぷっつりと縁が切れることもありうる。ただ、
夏希としては、二度会った相手はいないので、どうなるか本当に不安だった。

ちょうど遊びに来ていた由美にこのことを話した。

「こいこいちゃん良かったやないの。ええようになることを祈ってるわ」

由美の本心だった。

いや、佐岡家のみんなが夏希の縁談が上手くいくことを願っている。

「父はんも喜びやすやろ」

「まだ決まったわけじゃないから、あんまり騒がんといて欲しいわ」

「そんなこと心配せんかてええよ。だからこいこいちゃんはあせらず、本当にやっていけそうな人を選んだらええと思うとるよ」

「ありがとう。中姉ちゃん。頑張るわ」

「まあそんなにきばらんときいな。なるようにしかならへんのやさかい」

「そうね、肩に力が入らんようにしいへんと」

「そやそや、気持ちを楽にしたらええんや。気張りすぎるとぎこちなくなって、相手が引いてしまいよりますからね」


夏希が二回目の初デートにこぎつけたことは、その夜の佐岡家にとっては久々の明るい話題になった。



#26に続く。




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ほっつき写真 東京都上野  


















桜の散る前に上野に行きました。







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くじらと桜。国立科学博物館の前です。








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散った桜をみると、心がざわつく。








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目的地は国立博物館。









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博物館の鏡の壁に反射した桜をパチリ。









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桜と着物。その取り合わせは外国人の証。








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沖縄県 プロローグ  


















生まれて初めての沖縄。

茨城空港から約2時間のフライトです。

12月だったので台風の心配は無し。しかも飛行機はガラガラ。






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南の島はサイパンやグァム、ハワイなどはさんざん行ったのだが、沖縄には縁が
無かった。
昔はグァムに行くのと変わらない料金だったからどうせなら外国ということだったと
記憶している。
1度は訪ねておかねばならぬということもあり、行くことにした。




















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さてさて、沖縄那覇空港に降り立ち、定宿の東横インに向かったのだが、上の写真の意味は旅行記とは
違う。

レンタカーを借りて北部の国道を那覇に戻る途中、むこうのほうから明らかに軍用車と思われる車両が
近づいてきた。次第にその姿が明瞭になる。
海兵隊の装甲車だった。それもけっこうなスピードで走っている。演習に向かうのかそれとも基地に帰る
のか分からないけど、完全武装の兵隊が乗っている。
空には複数のヘリコプターが曲芸まがいの操縦訓練をしていた。

これが沖縄の現実だ。

普天間の危険さは全国的にも知れていることだが、市街地を外国の軍隊がフル装備で我が物顔の光景
は沖縄以外では考えられないだろう。
それならいっそのこと、海兵隊の訓練を表参道や渋谷でやれば本土の連中の目が覚めるのだろうか。

そうだ、それしかない。

東京のど真ん中に海兵隊の基地を作ればいい。

それでも「日本の安全保障なため」だと言い張れるか。
沖縄の現実を肌で感じてそう思った。










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連続小説・こいこいさんの恋 #24  



















淀屋橋北署の久保田刑事は、勇人の会社が出してきた、ライバルと思われる同業者のリストを眺めていた。

久保田の上司の刑事課の係長も同じ書類を見ていた。

「どの会社が黒幕かなんてことは調べればすぐに分かるやろ。
だが、実行犯との関係を立証することのほうが難しそうやな」

「そうなんです。実行犯はプロらしいので、いまごろは大阪にはいないんやろうし」

「難しい捜査やで」

「まず内部調査から初めて、関係者の張り込み、尾行やな」

「彼らの身辺警護もしなければあかんのですわ」

「それは副署長の方には報告済みやから、うちらは捜査に専念すればええよ」

「それから被害者の恋人のことなんやけど」

「佐岡家の四女やろ。お嬢やしなあ。世間の注目を浴びるやろうな」

「そうなると、捜査状況をマスコミに告知せなあかんし、やりづらいことが増えますな」

ふたりはお互いの顔を見ながら、暗澹な気持ちになっていた。



綾乃は、勇人からの電話で真実を聞かされた。

「ほんまやの。それやったら勇人さん、大変な目に会ったんやない。その原因がうちのことなんやろ」

「違うて。綾乃ちゃんは関係ない。あくまでもうちの会社を潰すのが目的なんやから」

「そやかて、うちが人質になったのも同然やないの」

「それは犯人たちの卑怯な手段に使われただけの話や」

「でも私の存在がなければ勇人さんも脅迫されなかったんやないの」

「違うて、綾乃ちゃんがいなくてもどちらにしても他の手段で脅したやろ。
あいつらの目的はあくまでも俺の会社なんやから」

「でも、勇人さんがうちのことそんなに思っていてくれたのが知れて、うれしい」

綾乃には女性警察官が外出の際には付き添うことになった。

不急の事態以外はなるべく外出しないようにと警察のほうから言われてはいるが、大学には行かなければならない。

勇人にも会いたい。

だが、そんなプライベートなことで警察官を派遣してもらうのも気が引けた。

家の前にはパトカーが常駐しているようにもなった。

このことで佐岡家は大騒ぎになっていた。

父親の由紀夫は勇人との交際を止めるようにも言われたし、敏美や由美からも
会わないようにしなはれときつく言われたりもしたのである。

ただ、夏見だけは「こいこいちゃんがほんまに好きならいつでも会うたらええよ」と言ってくれていた。



勇人の会社では、前田が焦り始めていた。警察に話して一週間、この事態を報道するマスコミはなかった。

テレビとはいわずとも、週刊誌くらいは動くのではないかと思ったが、一向に取材の電話がなかった。

「警察はマスコミに発表してないんやろうか」

「そうかも知れへんな。もしかすると、マスコミには流れても、マスコミ的に興味の湧かないことなのかも知れはんし」

「いや、やはりマスコミには知らせてへんやろ。警察としても事件の捜査が難しいやろうし、
マスコミに知れ渡ったら当然捜査の進捗情況も話さなくてはならないだろうし」

「確かにそうや。あれからあの刑事からも連絡ないしな」

「こちらからマスコミにリークするか」

「お前、マスコミに知り合いはあるんか」

「大学の同級生が大手出版社に勤めているよって、そいつに連絡してみようかいな」

前田の提案は勇人には頼もしかった。

このままでは、失った信用は取り戻せない。

現実に新しい提案を断ってきた会社が何軒も出てきている。

マスコミで、何故勇人が仁義に反する仕事放棄をしたのかということが分かれば、信用の回復に繋がる。

前田の知り合いに会社の運命がかかっていると勇人は思っていた。


#25に続く。






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熊本県・天草  






















天草半島に入ってから、入り江で港があったり、気になった風景に出会うと
クルマを停めました。








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独特の海岸の色と青い海。彩度を強調していますが、ほぼこの色です。









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昔は海釣りが好きで、釣船に乗っていました。午前4時に集合とかあって
深夜自宅を出て早めに港について、仮眠をとってから船に乗り込んで釣り
をしていたころのことを思い出しました。






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連続小説・こいこいさんの恋 #23  










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勇人から事件の真相を聞いた共同経営者の前田は、勇人の気持ちは理解出来たが、
そのために会社が苦境に陥ることになることには納得出来なかった。


「お前が大切な人を守りたいという気持ちは分かるんや。そやかて、
相手の要求に従うことしか出来ないというのは間違いのような気がするわ」

「 相手はプロの集団だぞ。警察が介入しても必ず警備の隙をついて彼女を殺すとまで言われたんだぞ」

「そこまで実行できると思ったんやろ」

「そうや」

「俺たちはこういうことに関しては素人や。相談だけでもしてみたらどうやろ。警察に通報したら殺すとは言われてなにのだろ」

「それはそうや。もう仕事を断ったんやから、あいつらは手出しはせえへんと思う」

「やはり警察に行こうや。もしこのことが世間に分かったら、ゲームメーカーさんのほうでも事情を察してくれるし、
うちの会社の評判も落とさずに済むかもしれへん」

「だが、そうなるとまた俺を拉致するか、彼女が襲われるかという事態になるんと違うか」

「だからそれまでに犯人を逮捕してもらうんや」

勇人は前田の意見に同意した。

このままでは犯人、そして裏にいる本当の犯人の思う壺だ。

社員たちのためにも、やるだけのことはやる価値があると考え直した。

勇人と前田は、誘拐事件のときの担当だった淀屋橋北署の久保田刑事に連絡をとった。

ものの30分もしないうちに久保田は勇人の会社に現れた。

「どういうことですか」

「実は、拉致されたとき脅迫されまして、私の大事な人の命のかわりに今やっている仕事を降りろと言われまして」

「何かあるとは思ってましたんや。とにかく相談してくれはって良かったですわ」

「私の大事な人というのは佐岡商会の社長の四女の佐岡綾乃さんです」

「あの船場の佐岡商会でっか」

「そうです」

「マスコミネタになりますよ、これは」

「マスコミへの発表やリークは控えてもらえますか」

「そうやなー。しかし、これはうちの捜査一課だけではなく、
警務班や地域化も巻き込んで大掛かりな警備体制をとらなくてはなりませんからな、
察周りの新聞記者にはバレますよ。そやかて今大事なことはあなたがたや佐岡家のお嬢さんの命やないですか」

勇人は綾乃を巻き込むことにかなりの躊躇があった。大阪でも古くからの船場の名家である佐岡家に迷惑をかけるし、
綾乃にも精神的にも肉体的にも相当な不安やプレッシャーをかけることになる。

「とにかく犯人を逮捕することですわ。そうすれば襲われることも無くなるやろうし」

「そうですね」

「あなたがたの会社を貶めることが目的なのははっきりしてますよって、ある程度犯人像は絞り込めると思いますわ」

「とりあえず、うちのライバル会社のリストを作りますわ」

「リストを作るくらい多いんですか」

「IT業界は競争が激しいんです。しかも今回は新ゲームソフトですやろ、一番競争が激しい分野ですわ」

「とにかくリストをもらってひとつひとつ潰していきます。
それと同時にあなたがたと佐岡さんの身辺警備を段取りします。
まずは所轄に戻って上司に相談しますから、またこちらから連絡させてもらいます」


勇人は、帰っていく久保田刑事の後姿を見送りながら、まだ自分の判断が正しかったかどうか迷っていた。



#24に続く。






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