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連続ミステリー  天使たちの幻夜 #1





















天使たちの幻夜




暗い。

人の気配がしない。

何も聞こえない。

ここはどこだろう。

どう動けばいいのか恐くて分からない。

どうしてここにいるのかさえも分からない。

「うぅー」

川村義男はうめき声を上げた。

全身から汗が噴出しているのを感じた。

口元からはよだれが出放題だ。

苦しい、誰か助けてくれ。





声に出そうとして目が覚めた。

「夢か」

どうしてか分からないが最近良くこんな恐ろしい夢を見る。

勤めている会社では問題が無いわけではないが、悩みがいうわけでもない。

家庭はまったく円満である。

ストレスは何も無い。それなのに、なぜ。




向こうのベッドでは、妻の麻理がまだ寝息をたてている。

ベッドサイドテーブルに置いてあるデジタル時計を見た。

まだ午前三時だった。起きるまだ三時間ある。

このまま寝れそうになければ勤めが辛くなると思っているうちにいつのまにか眠りについていた。





アラームなどかけなくても起きる時間になると自然と目が覚める。

眠りの質が浅いのは子供のときからだ。

それにしても、酷い夢をみたものだと思った。

背中に相当な汗をかいてるだろう。寝起きにシャワーでも浴びるか。

面倒臭いが、中年臭を指摘されるのも辛いから仕方ないと覚悟してベッドからのそのそと起きた。




シャワーを浴びて食卓テーブルに向かうと、娘たちが起きていて朝食を食べていた。

「パパ、おはよー」

一番末の三女が明るい声がした。

三女はまだ高校生になったばかりだった。

まだ子供の心が残っている可愛い子だ。

次女と長女は無言でトーストをかじり、牛乳を飲んでいる。

「パパは今日は遅いの?」

妻の麻理が娘たちの弁当を用意していた。

「今日は普通に帰るよ。夕食も食べるから」

「分かった」




いつもの朝だった。

義男は昨晩見た悪夢はもうすっかり忘れていた。

「いってきます」大学2年生の長女が最初に席を立った。

親の顔なんてまともに見ない。

「今日はバイトよね」麻理が聞いた。

「そうよ、ご飯は食べるからね」

「いってらっしゃい」

「私もごちそうさま」高校三年生の次女が次に席を立った。

来年は受験なので、毎日のように塾に行っている。

夕食はコンビニで買うのがいつものことだ。

三女はゆったりして、のんびりした性格で、今まで反抗期になったことがないほど素直な子だった。

義男を三女を溺愛していた。

「気おつけてな」

「じゃあね、パパ」

カーキ色のブレザーに紫のリボン、紺色のスカートに紺色のハイソックスがいかにも女子高生らしい。

少々太めだが、性格が明るいのが何よりだと義男は目を細めた。





今日は自宅からほど近い研究所に打ち合わせに行くのでいつもよりゆったりと出来、朝食もゆっくりと楽しむことが出来た。

「いってくる」

いつもと何も変わらない朝だった。


確かにそういう朝だった。




#2へ続く。










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Category: ミステリー
Published on: Sat,  28 2018 05:00
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