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ずっと、ずーっと

連続ミステリー #17  

















往古に対する異動辞令が発令された。

愛知県警捜査4課組織犯罪対策課主任というのが、往古の新しい肩書きになった。

着任から一週間、白地に付き添って、夜の繁華街に往古の姿があった。

往古と白地が扉の中に消えたのは、繁華街のなかでも規模の大きいあるクラブだった。

ビルの4階にあるそのクラブは、銀座のクラブや北新地のクラブと違って、格式が高いというよりも、若いホステスが多い、どちらかというとキャバクラのようなハデ派手しさがあった。

そのクラブの経営者は表面的には一般人なのだが、裏では名古屋に本部のある組の若頭が経営に関わっていた。

白地は、往古が正式に赴任したことのお祝いをしようと若頭に言われ、往古を伴って訪れたというわけだった。

若頭は往古たちがそのクラブに着いてから30分後に姿を現した。

白い着物を着ていて、白髪の丸坊主、色の着いたサングラスをかけた人目でやくざと分かる風貌は相変わらずだった。

若頭は、往古たちが立って迎えたにも関わらず、一瞥もしないで席に着いた。

懐から煙草を出したので、横に着いたホステスがすかさずライターで火をつけた。

往古はその様子を見ながら、この人とは深く交流は出来ないと確信した。

何か、人を寄せ付けない孤高の「悪魔」のような人だと思った。

しばらく往古たちのほうを見ないでいた若頭がやっと口を開いた。

「往古さん、これからよろしくお願いします。若いものが悪さをするようでしたら、いつでもお灸をすえていただいてもいいですから」

強面の外貌からは想像できないくらいビジネスライクな物言いをした。

「こちらこそお手柔らかにお願いします」

「まあ、硬い話はこれくらいにして、どうですか、気に入った女の子はいましたか」

「・・・・・、そんなことは」

「いいですよ、どんな女も選り取り放題ですから」

「いや、自分はそういうことは結構です」

白地があわてて口を挟んできた。

「頭、すいません。まだあなたがたとの付き合いの仕方を分かってないもんですから」

「白さん良いわ、まあじっくり勉強してくださいな」

その後一時間くらい飲んでから若頭は席を立った。

若頭が帰った後、往古がトイレに入ったとき、すぐに白地が入ってきた。

「バカヤロー」

いきなり右フックでパンチを食らわしてきた。

軽くよけたが、頬のはずれに拳が当たった。

その衝撃で往古はよろけた。

「お前、俺のキャリアを潰す気か。極道が懐を開いて頭を下げてきたんじゃ。女を選べと言われたら、ちゃんと選んで寝て来い。それがこれまでの慣習なんだよ。それくらいのことが分からなかったのか」

往古は、そのような付き合いのあることは十分に知っていた。

だが、今夜はそのことを承知できない心が動いたのだ。

愛知県南部の組の幹部に聞いた殺人事件の黒幕が若頭であることを心の奥にしまったはずなのに、いざ若頭の傲慢無礼な態度を見ることによって、そのことが心の扉を開いて出てきたのだった。

「あんなやくざものに舐められてたまるものか」そう心が叫んでいたのだ。

「これから女を選べよ」

そう言うと白地はトイレを出ていった。

鏡の前で口の中を見ると、なかが切れて血が出ていた。

往古は、自分の顔を見つめながら自分の決意を恥じていた。

「俺は、警察官を全うする」

別の決意が往古のなかで弾けていた。




#17に続く。










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