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ずっと、ずーっと

連続ミステリー 往古警部補の終焉 #18  



















往古はトイレで白地に思い切り殴られた。

「極道との付き合い方を覚えろ」ということだった。

名古屋に本部のある組の若頭に女を選べと言われたのにそれを辞退したからだった。




席に戻った往古に組の若い奴が近づいて来た。

「お好みの女の子を指名してください」

往古は、向かいの席で客の相手をしていない、手持ち無沙汰な女を指名した。

誰でも良かった。

とりあえず、この場を何とかしたいという気持ちだったからだった。

その女は年のころは二十歳そこそこでまだ幼さの残る子だった。

ロングドレスを着ているから大人に見えるがまだ子供だった。

組の若い奴が女に目配せした。

「外に出ましょう」女は往古に促した。

「何ていう名前だ」

「ゆいです」

「そうか、若そうだな」

「そう見えますか」

「見えるよ、まだ十代のようだ」

店を出てタクシーを拾って町外れにあるホテルに向かった。

部屋に入るとゆいがドレスを脱ぎ始めた。

「いいよそんなこと。俺はやる気はない」

「それじゃあ私が叱られます」

そう言いながら往古の首に手を回し、顔を近づけてきた。

「やったと言えばいい」そう言いながら首に回された手をほどく。

「本当に良いんですか」

「俺は刑事だ。やくざの世話した女とやることには我慢が出来ない」

「変わった人ですね」

「だから君もやくざものには嘘をつけよ。俺と朝まで二発やったと言えばいい」

「お客さんはまともな警察の人なんですね」

「他の腐った刑事と一緒にしないでくれ」

ゆいはうれしそうな顔をしていた。

いくらやくざの命令とはいえ、見ず知らずの男に抱かれるのは嫌だったのだろう。

当然のことだと往古は思った。

「往古さんというんでしたよね」

「そうだ、これが名刺だ」

往古は名刺を差し出した。

「困ったことがあれば電話してきなさい」

ゆいは悲しそうな顔をしていた。

何かありそうだと往古は思った。

「言ってみな、力になれることがあるかもしれない」

「でも良いです。怖いから」

「あいつらが怖いのか。それなら俺が君を守ってやる。やつらの支配から逃れたいんだろ」

「それはいいんです。自分が望んで夜の世界に入ったんだから。そうじゃないんです。家族のことなんですけど」

往古はゆいが可愛いと思った。

刑事とやくざの関係のあるクラブのホステスというのでなければ、自分の女にしたいという黒い欲望を感じさせる女だと思った。

「いいから、言ってみな」

「実は弟のことなんですけど、悪い仲間に入っていて、家に戻って来ないんです。母親が心配して体を壊しているんです」

「どんな仲間だ」

「噂では組の下部組織だということなんですけど」

「半グレか」

「そうだと思います」

「名前は」

「黒後翼といいます」

「よし、調べてあげる」

「ありがとうございます」



翌朝まで往古はゆいと話を続けた。

ゆいの両親はゆいが6歳のときに離婚した。

ゆいと弟を抱えて母親は懸命に働いたが、ゆいは高校を辞めて働かざるを得なかったという。

弟は中学生くらいになるとグレて悪い仲間とつるむことになった。

高校にも行かず、母親と姉のゆいにお小遣いをたかって遊び歩くいっぱしの悪になっていった。

そして半年前から家に帰らなくなって、まったくの音信不通になったということだった。

朝日が眩しい朝、ホテルにタクシーを二台呼び、往古はゆいに一万円を渡して帰らせた。

往古はそのまま署に上がった。



#19に続く。










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