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ずっと、ずーっと

連続ミステリー・往古警部補の終焉 #21  









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上津は往古を会議室に連れていった。
何か言われることは分かっているが、往古に「話がある」と言ったときの上津の顔は歪んでいた。

ものすごく文句がある、そんな感じだった。

会議室に入るなり、上津は煙草に火をつけた。

いかにも機嫌が悪そうだった。

「何ですか」

往古は別に上津を毛嫌いはしていなかった。

マル暴の刑事は、扱う対象が極道なだけにあくの強い人が多いから、上津がどんなに嫌な人間であっても、刑事としての道をはずしていないならそれは警察官として許容できるものだった。

「お前もなあ、マル暴の刑事として認められたいっつうのは分かるさ。でもな、一応俺はお前の相棒なんだから、極道の奴と面会するときは知らせてくれよな」

往古はすぐに頭に浮かんだのが、愛知県南部にある組の幹部に会ったことだった。

「あそこの組は、いろんなチャンネルを持っている。それが強みでもあるから、敵が多いあの地で大きなしのぎが出来るわけだ。」

「そうですね」

やっぱり来たか。

どこから情報が漏れたのだろうと往古は不思議だった。

「教えてやるわ。あの組は多くのチャンネルを駆使して情報を先取りしてうまく極道の世界を泳いでいる。だがな、逆に言えばそれがネックでもある。敵もいないが、味方もいないというわけだ」

上津の表情は強張っていた。

言ってやったという顔つきだった。

往古はそこまでは気づかなかった。

やくざの世界を俯瞰して視るということが往古には欠落していたことを悟った。

「意外って顔してんじゃないよ。お前があそこの組の幹部と通じようとしているくらいなことはすぐに俺たちには届くんだよ。あいつらにしてみれば、極道の数は多いけど、マル暴の数は知れてるからな。だから俺らの動きは色んな組の情報網にすぐに引っかかるというわけだ」

「そうですか、何も話さなくてすいません」

「まあ、それは良いだろ。お前も自分のチャンネルを持つことは必要だからな。しかし、あの組の幹部は誰に紹介されたんだ」

上津は往古を睨みつけた。

「それは言えませんね。紹介してくれた人に迷惑をかけたくないんで。上津さんが信用出来ないということではないのですが、やはり私にとって初めての世界なんで」

「分かったよ。そのことはいい。ところでお前は半グレの奴らに興味があるのか」

そこまで知っているのかと往古は身震いした。

「この世界は狭いんだよ。気をつけないと極道に消されるぞ」

「いや、別にたいしたことではなく、知り合いの身内のことで相談されましたから」

「半グレとはいえ、組の息のかかった奴も多いからな。警察が組織で動いているならともかく、お前が個人的なことで動いていると分かったらあいつら何をするか分からないぞ。歯止めの利かない連中なんだからさ」

上津は、先輩がアドバイスしているような顔を今はしているが、最初に声をかけてきたときは顔が歪むほど何かに怒っているようだった。それを突き止めなければならないと思った。

「上津さんはもっと私に聞きたいことがあるんじゃないですか」

渋い顔をしていた。

「黒後という奴のことを嗅ぎ回っているんだってな」

「はい、そいつが知り合いの身内なもんで」

「そいつがどうしたというんだ」

「家に帰って来なくて、連絡も取れないということだったので、所在を確認できたらと思いまして」

「誰に頼まれたんだ」

「それも勘弁してください」

「どうでもいいけど、そいつのことは忘れろ」

上津がとうとう本性を現した。


#22に続く。












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