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連続ミステリー 往古警部補の終焉 #22  


















上津は豹変した。

往古がゆいに頼まれた、弟のことを忘れろと言い放った。

「いいな」

一言で去っていった。

往古は上津の忠告の真意は分かっていた。

極道の世界と向き合う組織犯罪対策課のマル暴というセクションは、どうしても情報を取るために極道のなかに深く足を突っ込んでしまうことになる。

同じ組対でも極道以外の反社会的組織の係りだと、例え深く接触していても、極道と決定的に違うのは、極道は親分と子分という擬似親子関係でも、その絆力や規範が全然違うからだ。

裏切りは許されないというのは人間同士の世界であるから当たり前なのだが、それ以上に極道は建前を優先する社会ではないかと往古は考えていた。

だから、今回の事件でも、組織のために殺人罪で起訴され、裁かれて、何十年も服役することを「当たり前」として子分が受け入れるというのが極道の世界であることは分かっている。

だから、もしかしたら本星かも知れない黒後翼を追いかけるということは、極道にとって「組織を破壊する」行為ととられ、これまで積み上げてきたマル暴のチャンネルにヒビを入れることに繋がる。そのことを上津は警戒しているのだろうということだ。



だが、そんな思いもゆいへの思いには抗し難いことだった。

往古はそれぼどゆいにのめり込んでいた。

ゆいと初めて会った夜から、実はすでに数回ゆいと会っていた。肉体関係も出来た。

ゆいのために早く黒後翼を見つけて、組織から離れさせ、どこか遠くの町で人生をやり直して欲しかったのだ。

そのことでゆいと会えなくなるかも知れないが、それがゆいのためになるのだったら、それはそれで往古は満足することだった。



次の日、往古は半グレの情報屋のところにいた。

黒後翼の情報があると電話があったからだった。

「どうも市内のアパートに匿われているみたいです。奴の女がいまして、そいつが働いている風俗の仲間からの話なんですわ」

「具体的な住所とか分からないか」

「本町の郵便局の裏だということですわ」

「しかしよくそこまで女が漏らしたな」

「その女も奴から逃げたいみたいです」

「どうしてだ」

「ヤバイ奴すぎるっていうことらしいですわ」

「ヤバイ?」

「普通の神経じゃないというか、怒ると手がつけられないという話です」

「子供時代は大人しかったと聞いたんだが」

「誰にですか」

「いや、昔の仲間からだけどな」

往古は間違って、姉から聞いたと言いそうになった。

情報屋なんて何も信用できない。

組の奴にゆいとのことがバレたらゆいに迷惑が掛かる。

情報屋と別れたあと、すぐに本町の郵便局に向かった。



そのアパートは、郵便局のすぐ裏にあった。

木造の古い建物だった。

室内に潜んでいれば所在の確認は出来ない。

とりあえず、アパートを管理する不動産屋を探して、住居人を確かめ、怪しそうな部屋を確認しなければならない。

警察の正式な捜査ではないので、普通なら身分を隠して不動産屋に当たらなくてはならないのだが、往古は少し常軌を逸していた。

警官の身分の証であるバッジを使うことにしたのだ。

所轄にバレたら面倒なことになる。

しかし、往古にはそんな簡単な計算もできない頭になっていた。





管理する不動産屋は国道沿いにあった。

バッジを示して、アパートの住人を調べてもらった。

すると、8部屋あるなかで一人の女性の部屋が怪しかった。

他は、学生や勤め人などの確認ができる者だったが、女性の場合は、夫と別居中の一人暮らしで、家賃は実家の親が出しているということだったが、一年分を現金で先払いをしていた。しかも、本人は無職だということだった。

当たりはついた。

後は張り込みをしてその部屋に出入りする人間を確かめれば、そこに黒後翼がいる可能性が高くなる。

上司の課長には、休暇を二日もらい、翌日から張り込むことにした。




#23に続く。







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